5Sのしつけと森田療法の核心について

11月22日(第4土曜日)の下丸子土曜集談会では、職場改善の方法として知られる5Sのうち、とくに最後の「しつけ(躾)」に焦点が当てられました。

5Sといえば 整理・整頓・清掃・清潔・しつけ の5つですが、 最後の「しつけ」だけは少し特別です。 なぜかというと——

• 整理はものを手放すこと

• 整頓は場所を整えること

• 清掃は汚れを落とすこと

• 清潔は状態を保つこと

だけど 、しつけだけは 人間の在り方そのものに関わるからです。 つまり、 毎日の小さな行動を続ける力であり、 同時に気分に左右されず、必要なことを淡々とやる力ともいえます。これはまさに、森田療法の核心にもつながっています。 .森田療法の日常実践と「しつけ」は同じ方向を向いています。 森田療法の基本は、 • 気分本位ではなく行動本位 • やるべきことを淡々とやる • 生活の型をつくる • あるがままを前提に、それでも動く という「生き方のしつけ」と言えます。 5Sのしつけと重ね合わせると、次のようになります。

「整理・整頓・清掃・清潔」がものや状態を整える技法であるのに対し、「しつけ」だけは人の在り方そのものに働きかけるという点が強調されます。

森田療法では、気分や不安に振り回されず、やるべきことを生活のとして続けていくことを大切にします。これは言いかえれば、生き方のしつけといえるものです。5Sにおける「しつけ」を「決めたことを続ける生活習慣」と捉えるなら、森田療法の日常実践は「気分がどうであれ、必要な行動を続ける生活訓練」といえます。両者は同じ方向を向いており、「小さな行動を積み重ねることで心が整っていく」という共通点を持っています。

この視点は、特に女性懇談会での学びととても相性が良いといえます。家庭・仕事・地域など複数の役割を担う女性は、どうしても心が散らかりやすく、気づけば自分のことが後回しになりがちです。そこで5Sを心のケアの道具として捉えると、日常の整え方が自然と見えてきます。

たとえば
・整理=思い込みや無理を手放す
・整頓=心の定位置をつくる
・清掃=手を動かして気分を整える
・清潔=乱れたら戻す生活リズム
・しつけ=自分に優しい習慣づくり
というふうに、生活の中で無理なく実践につなげられるのです。だから女性懇談会では、 5Sを「心の整え方」の切り口として扱うと、 生活のストレスをどうしたらいいかが とてもわかりやすくなるのです。

懇談会では、まず今の生活をふり返り、「何が散らかっているのか」を見つめ、5Sの5つの視点で整理し、そこから森田療法の日常実践へとつなげていく流れがとても役に立ちます。さらに、次回までに「小さなゆる習慣」を一つだけ決めることで、自信が育ち、参加が続けやすくなる効果もあります。

今回のテーマを通して、5Sの「しつけ」は単なる規律ではなく、心の筋力をそっと育てる生き方の技であることが分かりました。森田療法とも深く響き合うこの実践は、これからの女性懇談会の進め方にも、新しい温かい方向性をもたらしてくれるはずです。どうぞ、日々の暮らしの中で、自分を大切に育てるやさしい習慣として取り入れてみてください。