10月の大田集談会レポートです。
10月の大田集談会は、秋晴れの穏やかな日差しの中で無事に開催されました。
参加者は11名(うち女性4名、初回参加1名)。顔なじみのメンバーに新しい風が加わり、会場には柔らかな緊張感と温かな空気が入り混じっていました。
今月のテーマは、「今後やってみたいこと、やりたいこと」。
それぞれが自分の思いや希望、こだわりを語りました。
「小さなことでも、続けていきたい」
「今の自分だからこそ、挑戦できることがある」
そんな言葉のひとつひとつが、静かに響き合う時間となりました。
一方で、話の底には、森田療法で語られる“不安”や“症状”との関係が、いつもそっと顔をのぞかせます。
症状は、完全に消えることはない。
「よくやった」と自分を励ます日もあれば、「まだだめだな」とため息をつく瞬間もある。
けれども、その揺れを否定せずに受け入れることも森田の実践の核心といえるでしょう。
「症状は敵ではなく、同伴者のような存在かもしれない」
そう気づいたとき、心の風景が少し変わります。
森田療法が教えてくれたのは、治そうとしない勇気、不安があるなら不安のまま、動悸がするなら動悸を感じながら行動する。
それが「自然」に沿った生き方であり、少しずつ自由を取り戻す道につながります。
森田の言葉を借りれば、安心とは“治ること”ではなく“慣れること”。
症状があっても、その状態に慣れ、やがて動じなくなっていく。
その過程で、私たちは少しずつ「生きる力」を取り戻します。
何度も経験し、何度も「できた」と思える小さな成功を積み重ねるうちに、
症状の“衝撃”はいつのまにか柔らかくなっていくのです。
症状は消えない。
でも、付き合い方は変えられる。
その変化こそが、森田の実践が教える「ほんとうの回復」なのかもしれません。
ある参加者はこう語りました。
「今日も胸の奥に、あの違和感がある。でも、もう怖くはないんです」
症状に対して「また君か。今日は何をする?」と声をかけられるようになったと。
かつての“敵”が、いまは“相棒”のような存在。
消えなくてもいい。むしろ、そこにいてくれることが、
“ちゃんと感じて生きている”という証になると。
来月の大田集談会は、11月9日(日)、同じ会場にて開催予定です。
派遣講師による講話を予定しています。
それぞれの一か月が実りある時間となりますように。
また来月、笑顔でお会いしましょう。
ー読売新聞掲載の参考記事 山口博弥(読売新聞東京本社 編集委員)ー