和田秀樹先生が「生活の発見会」を紹介──森田療法と自助グループの力
和田秀樹先生のYouTubeチャンネルで、「生活の発見会」が取り上げられていました。森田療法をベースとした自助グループの価値について、非常に示唆に富むお話があったので、ここで内容をまとめ、ご紹介したいと思います。
________________________________________
■ 日本のメンタルヘルスの現状と課題
日本では、メンタル不調を感じても、十分なカウンセリング治療を受けるのが難しいという現状があります。ストレスチェックで「高ストレス」と認定され、産業医に勧められて心療内科や精神科を受診しても、診察は5分程度で終わってしまうことが多いのが実情です。せっかく相談に行っても、「軽いうつですね」と診断され、薬だけが処方される――そんなケースが少なくありません。
これが、今の日本の「標準的な」精神医療のかたちなのです。
________________________________________
■ じっくり話を聴く医療の場を求めて
こうした現状に問題意識を持ち、和田先生は「和田秀樹こころとからだのクリニック」を開設しました。原則として50分単位で、しっかりと話を聴くカウンセリングスタイルの医療を実践しています。非常に多忙なため予約が取りづらいのが難点ですが、こうした取り組みがもっと広がってほしいと感じます。
________________________________________
■ 森田療法の本質──「不安なまま生きる」知恵
和田先生が紹介する森田療法は、「不安を取り除く」のではなく、「不安を抱えたまま、どう生きていくか」を共に考える治療法です。
たとえば、赤面恐怖に悩む人がいたとします。顔が赤くなることを何とか治そうと必死になっても、うまくいかずに苦しむ──森田療法では、その悩みに対してこんな対話が行われます。
「顔が赤くて、何が困るの?」
「人に嫌われるからです」
「じゃあ、あなたは人に好かれたいんだね」
「でも、顔が赤いと好かれませんよ」
「顔が赤くても好かれている人はいますよ」
「そんなのは例外です」
「逆に、顔が赤くなくても嫌われている人もたくさんいますよ」
このようにして、「顔の赤さ」を治すのではなく、「人に好かれるにはどうしたらよいか」に視点を転換します。たとえば、笑顔を増やす、話し方を工夫する、親しみやすさを高めるなど、他にもできることはたくさんあります。これが森田療法の根本的なアプローチです。
________________________________________
■ 症状ではなく「生き方」を支える
森田療法では、症状の消失をゴールにするのではなく、「あなたはどう生きたいのか」「何を実現したいのか」といった人生の目標に目を向けます。不安や不快な感情があっても、それにとらわれず、自分の人生を充実させていく手助けをしていくのです。
________________________________________
■ 自助グループの力──「生活の発見会」とは
そして、この森田療法にはもうひとつ大きな特長があります。それは、治療によって回復した人たちが、同じく悩む人たちと体験を語り合う「自助グループ」の存在です。これが「生活の発見会」です。
「こう考え方を変えたら楽になった」「余計なことを気にしなくなったら、自然と症状が気にならなくなった」――そんな体験を語り合うことで、医師にかからずとも快方に向かうケースが多くあります。
自助グループは、特に依存症や神経症といった領域で高い効果を発揮します。なかには「もう自助グループしか治療法はない」と断言する専門家もいるほどです。
________________________________________
■ 経済的にも現実的な選択肢
生活の発見会は1970年に設立され、全国規模で活動を展開しています。もちろん年会費などは必要ですが、一般的なカウンセリング治療に比べれば経済的な負担は軽く、継続的な支援を受けるには非常に実用的な選択肢です。
強迫神経症、対人恐怖などに悩む人たちにも多くの成果が報告されており、「悩みすぎて苦しい」と感じている方には、ぜひ一度参加を検討していただきたい会です。
________________________________________
■ 生活の発見会に興味をもったら
生活の発見会にはホームページもあり、活動内容や地域の集まりなどの情報を知ることができます。まずは気軽にサイトを訪ねてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、長年の悩みに風穴をあけるきっかけになるかもしれません。
■ 生活の発見会から、あなたへ──ひとりで悩まず、まずは一緒に話してみませんか?
もし今、心のどこかで「こんな自分じゃダメだ」「この不安さえなければ」と思いながら、日々をなんとかやり過ごしている方がいたら――わたしたち「生活の発見会」は、あなたにそっと声をかけたいと思っています。
ここは、病院でもセラピストのオフィスでもありません。専門家に治してもらう場所ではなく、同じような悩みや体験を持った仲間たちが、少しずつ自分を受け入れながら、日々をともに歩いていく「居場所」です。
だれもが「完璧」ではなく、不安や緊張、症状や葛藤を抱えて生きています。けれど、そうした気持ちを無理に消そうとせず、そのまま抱えながらも、どうにか自分らしく生きていける工夫がある――それが森田療法の考え方であり、私たちが大切にしている姿勢です。
生活の発見会では、参加者どうしが気軽に話をし、お互いの体験から学び合います。顔を赤らめることに悩んだ人、人前で緊張して声が出なくなった人、潔癖や不安に振り回されていた人……いろんな悩みが、ここでは「共感できる話」になります。
「ただ話を聞いてくれる人がいる」
「同じようなことで悩んでいた人が、今は前向きに生活している」
そんな出会いが、いつのまにか自分を軽くしてくれることもあります。
もちろん、無理に話す必要はありません。最初は聴くだけの参加でもかまいません。安心して参加できるよう、会の進め方にも配慮しています。
________________________________________
■ 会に参加するには?
生活の発見会は全国各地で定期的に開催されており、オンラインで参加できる集まりも増えています。参加にあたっては、公式ホームページからお近くの会場を探すことができます。
生活の発見会 公式ホームページ:https://www.hakkenkai.jp/
会費はかかりますが、1回あたりの費用は精神科やカウンセリングに通うよりもずっと低く、何より「治った人が話す言葉」が力になります。
________________________________________
■ 最後に──あなたの悩みは、あなたひとりのものではありません
「悩みを持つこと」は、けっして恥ずかしいことではありません。むしろ、それに真剣に向き合っているという証です。そんなあなたの努力を、生活の発見会は静かに応援したいと思っています。
ぜひ一度、お気軽に扉をたたいてみてください。
あなたの話を聴いてくれる人が、そこには必ずいます。