新幹線上田駅からバスで向かった先のお寺ー国宝高岡山瑞泉寺

「観光立国、日本」──観光資源としての潜在力

コロナ収束後、日本が訪れたい旅行先として世界中から高い人気を集めている背景には、日本のもつ観光資源としての「潜在力」と、コロナ禍で人々の旅行の価値観が変化したことが深く関係している。

まず、日本の観光地としての潜在力とは、多様な自然環境、豊かな文化遺産、清潔で安全な社会、そしてもてなしの心(おもてなし)に象徴されるサービス精神の高さにある。四季折々の風景が楽しめる国土は、桜や紅葉、雪景色や温泉地など、都市部から一歩離れるだけで美しい自然と出会えるのが特徴。これらはパンデミック以降、人混みを避けつつリフレッシュしたいと考える旅行者のニーズに非常によく合致している。

また、日本はアジアに位置しつつも、欧米豪の人々にとっても「エキゾチックでありながら安心して旅行できる」という稀有な国でもある。治安の良さ、交通の正確さ、衛生意識の高さは、感染症への懸念が残るポストコロナ時代において、安心感を与える要素。加えて、アニメ、寿司、神社仏閣など、ソフトパワーによる文化的魅力も広く知られており、「一度は訪れたい国」としての期待値が高まっていたタイミングで、コロナ禍がそれを一層強めることとなった。

さらに、自然の中での体験(ハイキング、里山体験、ローカル温泉など)が見直されるなかで、都市からもアクセスしやすく、文化や自然が融合した場所が点在する日本は、持続可能な観光(サステナブルツーリズム)の観点からも非常に魅力的である。

つまり、日本はもともと持っていた豊かな観光資源という「潜在力」と、パンデミック後の「旅行の質を重視する」という世界的な意識の変化がうまく重なったことで、旅行先としての魅力が一層際立つ結果となったといえる。

「静けさの国、日本」──コロナ後に人々が求めたもの

パンデミックが世界を包み込んだ数年、人々は移動する自由を奪われ、同時に「どこへ行きたいのか」ではなく、「なぜ行きたいのか」を深く問われるようになった。観光地の賑わいよりも、静けさや癒し、自分自身と向き合う時間を求める声が増えていったのは自然な流れだったのかもしれない。

そのなかで、世界中から「行きたい国」として名を上げたのが日本だった。

なぜ日本なのか。それは、日本という国が古くから持ち続けている「スピリチュアリティ=霊性」が、現代の旅人の心に静かに響いたからではないか。

日本のスピリチュアリティは、声高に語られるものではない。山を「神」と見なし、石にも祈りを捧げるような、自然と共にある感性。神社や寺に足を踏み入れたときの、あの凛とした空気。手を合わせる動作のなかに、過去と未来が一瞬交差するような不思議な感覚。そうした「見えないものと共に生きる文化」が、世界の喧騒をくぐり抜けてきた人々の心に、そっと寄り添ったのではないかと思う。

人混みを避けて選ばれる自然体験も、ただのアウトドアでは終わらない。里山を歩けば、木々のざわめきや鳥の声に耳を澄まし、そこに「命のつながり」を感じる。古道をたどれば、かつての旅人たちの気配が今もなお、風の中に残っているように思える。それは観光というより、「小さな巡礼」と呼びたくなるような時間だ。

コロナが教えてくれたのは、遠くへ行くことの尊さではなく、「どう生きたいか」を考える時間の大切さだった。そんな問いに応える場所として、日本という国は今、静かにその扉を開いている。

関連する記事がありましたので掲載します。 https://newsphere.jp/ 2025.04.27

コロナ後に行きたい国、日本が1位 アジアだけでなく欧米豪からも人気 Feb 15 2022

コロナ収束後に訪れたい旅行先として、日本が最も人気があることがオンラインのアンケート調査によりわかった。アジア在住の人々からも欧米豪の人々からも、ともに海外旅行で希望する行き先の1位に選ばれている。人混みを避けてか、自然鑑賞など屋外のアクティビティが人気だ。

◆アジア・欧米豪から共通して支持を受ける
調査は日本政策投資銀行株式会社(DBJ)と公益財団法人の日本交通公社(JTBF)が共同し、昨年10月にオンラインで実施した。海外在住のおよそ7000人の回答者に「次に海外旅行したい国」を質問したところ、選択肢として用意された世界の31の国と地域中、日本が1位を占めた。旅行先として好まれた順位と選択した回答者の割合(かっこ内)は次のようになっている。アジアと欧米豪の居住者の両方から、一貫して高い支持を得ていることがわかる。

アジア居住者による回答(複数回答、上位5ヶ国の抜粋):
1位:日本(67%)
2位:韓国(43%)
3位:台湾(28%)
4位:オーストラリア(27%)
5位:タイ(26%)

欧米豪居住者による回答(複数回答、上位5ヶ国の抜粋):
1位:日本(37%)
2位:アメリカ(33%)
3位:オーストラリア(28%)
4位:カナダ(28%)
5位:イタリア(25%)
5位:イギリス(25%)

DBJ・JTBF両社は『アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査』と題し、毎年同様のアンケートを実施している。

2020年以降はコロナ禍を前提とした特別調査の形で実施しており、2020年6月の第1回、同年12月の第2回に続き、今回で3回目となる。今回は海外旅行経験のある7355人を対象にアンケートを実施し、うち6294名から有効な回答を得た。回答者の居住国は前回同様、アジアと欧米豪を対象としている。

両社は報告書のなかで「次に海外旅行したい国・地域の1位は『日本』。アジア、欧米豪ともに第2回調査に引き続きトップ」と述べ、長引くパンデミックのなかで変わらない人気を誇ると分析している。

第1回調査でも在アジアの人々から1位の支持を得たが、当時は56%の割合であった。今回の67%でなお地位を盤石にした形となる。報告書は「特にアジアにおいて、日本の人気は群を抜いており、2位の韓国とは20ポイント以上の差がある」と指摘している。

Aleksandra Suzi / Shutterstock.com

◆日本に旅行に行きたい理由は?

日本を訪れたい理由としては、以前訪れて良い体験ができたという声がトップとなった。また、清潔さ、食事のおいしさ、治安の良さなども評価につながっているようだ。観光目的で日本を訪れたい理由を質問したところ、次のような結果となっている。

なお、かっこ内は回答者全体に占める割合を指す。調査は各項目について5段階で評価してもらい、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した割合を集計している。

1位:以前も旅行したことがあり、気に入ったから(88%)
2位:行きたい観光地や観光施設があるから(84%)
3位:清潔だから(83%)

3位:食事が美味しいから(83%)
5位:治安が良いから(79%)
5位:体験したいツアーやアクティビティがあるから(79%)

以上の項目では、アジア・欧米豪を問わず高い評価を得ている。一方、7位以下の項目についてはアジアから高い支持を集める一方、欧米豪による評価とは差が出る形となった。

7位:リラックスできるリゾート地だから(アジア:79%/欧米豪:62%)
8位:買い物がしたいから(同77%/58%)
9位:予算が合うから(71%/53%)
9位:泊まりたい宿泊施設があるから(70%/54%)
11位:渡航時間が短いから(71%/38%)

アジアの人々からは、ショッピングの魅力と低予算の旅行客にも優しい点が歓迎されているようだ。一方、欧米による支持が唯一アジアを上回った項目として、13位の「長期滞在に適しているから」が目立つ。長期休暇を取得しやすい欧米の居住者にとって、長期を快適に過ごせるか否かは大きなポイントになってくるようだ。

◆桜に日本料理…… 伝統的な体験が好まれる
訪日時に実際に行いたいアクティビティとしては、自然の満喫や花見、そして日本料理を堪能するなど、いかにも日本らしい体験が上位を占めている。

「訪日旅行で体験したいこと」として用意した全35種のアクティビティのうち、上位は以下のようになった。かっこ内は全回答者に占める割合(複数回答)を示す。1位の「自然や風景の見物」は、他人と適度な距離を保てることも好まれたようだ。コロナ以前の調査よりも約7ポイントの伸びをみせている。

1位:自然や風景の見物(65%)
2位:桜の鑑賞(64%)
3位:伝統的日本料理(57%)
4位:温泉への入浴(53%)
5位:有名な史跡や歴史的な建築物の見物(50%)
5位:雪景色鑑賞(50%)
7位:紅葉の鑑賞(45%)
7位:日本庭園の見物(45%)

いずれも洋の東西を問わず高い需要があるが、温泉については欧米豪の支持率が38%とやや低い。文化的に裸の付き合いに若干抵抗がある傾向がうかがえる。

反対に欧米での支持が高い項目は、7位の「日本庭園の見物」だった。アジアか

らの支持が42%だったのに対し、欧米豪では3割増しとなる57%が興味を示している。

◆調査について
有効回答者のうちおよそ7割はアジア居住となっており、具体的には韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアが含まれる。残りの3割は、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランスであった。国別の回答者数はほぼ均一となっている。前掲の、次に訪れたい旅行先を問う質問では、回答者の住む国の近隣地域(例:中国の場合は香港・マカオ、アメリカの場合はカナダ・メキシコ・ハワイ・グアム)はあらかじめ選択肢から除外された。

実際の調査は、DBJおよびJTBFから委託を受けた楽天インサイト株式会社が実施した。回答者の半数近く(47%)が過去1回以上の訪日経験があると答えていることから、回答者群に一定の偏りが生じている可能性は否定できない。ただし、欧米豪の回答者に限れば訪日経験があるのは回答者のおよそ2割に限られたが、それでも日本が1位の支持を集める結果となった。

コロナ後の楽しみとして、日本への旅行を思い描いている人は多いようだ。