メンタルヘルス岡本記念財団の「心の健康セミナー」のご案内が届きました。
1月から3月までの期間で、9回の講演があります。
今回は、2回目の樋之口潤一郎先生のご担当でした。
簡単ですが、先生のお話を記録してみました。
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森田療法とはどのような治療法か .01.20PM7-8時
~患者さんの回復過程を交えて~ 樋之口潤一郎先生
講話ポイント「何とかなる・感覚の醸成・経験の積み重ねが大切」
研究テーマ:慢性鬱病に対する森田療法
:短時間診療における森田療法
強迫性障害の事例(不潔恐怖、嘔吐恐怖、30代女性主婦、男子幼児1名あり)
森田療法の緩和医療に適用は今後、実例では皮膚科に応用
症状の背景にある傾向を探る
神経質性格/べき思考/自己肯定感が低い/自己中心的/自信がない
自分以外の外の尺度に基準を置く➡あわせる意味で強迫的である
悪循環とは/とらわれの本質/とらわれ固着した状態➡その背景の生の欲望
いきる健康な力/生活に生かし切れていない/ここが重要なポイント
べき思考をゆるめる➡日常生活に発揮すること=この体験が重要
体験が重要=不安の受容が第一
生活の回復が大切
繰り返すと感覚があいまいになる
手洗いしていい/ただし子供の世話はかかさない
強迫の病は想像からくる
持ちこたえる➡感情の変化/症状は悪くない=価値判断/家族は絶対まきこまない
症状に対する処方箋=感情に対する処方箋/感情の流れが遅い➡待つことの大切(感情)
不安を打ち消さない=戦わない➡実生活の具体化
恐怖突入はあいまい 手の届く具体化 ここさえできたら
大丈夫の感じが大切➡生活に目が向いてきた➡生活を通して感じを大切にする
観念優位から五感をよりどころに生活する取り組み
治療は行き詰る➡生活に目を向ける
生活の広がりにつれて欲求が深まる
実生活への欲求がべき思考になった
べき思考 ➡人間関係や作業への取り組み方を考える➡完璧をあきらめる
現実的なサイズに落とし込みながらやり繰りする
強迫はのこしていい/くせだから/むしろ体調管理は大切
実生活の欲求の発揮に目を向ける
いたしかたないという考え方
現実生活に即した欲求の発揮をする
まとめ
べき思考には回復したい=生の欲望が隠れている
行動を通して実生活に発揮できることが重要
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先生のご講話を参考にべき思考を考えてみましょう。
行動療法におけるべき思考の対処法とリスク管理について
認知行動療法(CBT)における「べき思考」とは、過度に厳しい自己要求や他者への期待を指します。このような思考パターンは、自己批判やストレスを引き起こし、精神的健康に悪影響を与えることがあります。例えば、「私は完璧でなければならない」「他人はいつも私に理解を示さなければならない」といった思考が該当します。
べき思考の対処法には、以下のような方法があります。
- べき思考を認識する
まずは自分が「べき思考」をしていることに気づくことが大切です。自分自身の思考に対してメタ認知を持つことが第一歩です。
- 思考の現実性を問い直す
べき思考が現実的であるかどうかを検討します。例えば、「私が完璧である必要があるか?」と自問し、完璧でなくても良い理由を見つけ出します。
- 柔軟な考え方にシフトする
「べき」思考を「したい」や「できればいいな」に置き換えることによって、柔軟で現実的な考え方を育てます。例えば、「完璧でない自分も十分に価値がある」と認識するようにするのです。
- 自己受容を促す
自分の欠点や弱点も含めて、自己を受け入れることが重要です。自己批判から解放されることで、無理なく自分らしい生活を送ることができます。
リスク管理においては、べき思考が引き起こす可能性のある心理的なリスクに対して、予防的な対策を講じることが求められます。具体的な方法としては:
- ストレス管理
過度な期待やプレッシャーからくるストレスを管理する方法を学ぶことが有効です。深呼吸、リラクゼーション法、瞑想などを取り入れて心身をリラックスさせます。
- 小さな目標設定
過度な期待を避けるために、小さな達成可能な目標を設定し、段階的にステップアップしていくことが大切です。これにより、大きなストレスを感じることなく前進できます。
- サポートを求める
べき思考に関する問題を一人で抱え込まず、信頼できる人と話すことが有効です。専門家とのカウンセリングやサポートグループもリスクを管理するための重要な手段です。
認知行動療法では、こうした方法を使ってべき思考を現実的で柔軟な思考に変えることを目指します。リスク管理を意識しながら進めることで、精神的な健康を保ちながらストレスを軽減することができます。
森田療法におけるべき思考の対処法とリスク管理について
森田療法は、精神的な症状やストレスの管理において、「ありのままの自分を受け入れ、気持ちに無理に従おうとせずに行動すること」を基本としています。森田療法における「べき思考」に対する対処法やリスク管理は、認知行動療法とはアプローチが異なりますが、共通して重要なのは「感情や思考をコントロールしようとするのではなく、生活の中で適切に対応していく」という点です。
森田療法におけるべき思考の対処法
森田療法は、「心の動きに逆らわず、そのままにしておく」という基本理念に基づいています。そのため、べき思考に対しても「その思いを無理に排除する」のではなく、その思いが湧いてきたことをそのまま受け入れ、自然に気持ちを流れに任せる方法が採られます。具体的には以下のようなアプローチがあります。
「あるがまま」の自分を認める
森田療法では、「べき思考」が生じても、それを無理に変えようとするのではなく、あくまで自分の感情や思考を「あるがまま」に受け入れることが大切です。例えば、「完璧でなければならない」というべき思考が湧いた場合、その思考を強制的に打ち消すのではなく、その思いをそのまま認めた上で、生活において自然に行動を起こすことが奨励されます。
行動中心のアプローチ
森田療法は、思考よりも行動に重きを置きます。たとえば、「自分は完璧でなければならない」というべき思考を抱えている場合でも、それに従うのではなく、「完璧を求めなくても良い」という認識を持って、自分の能力や限界に応じた行動を取るようにします。このように、べき思考があっても、それにとらわれずに日常生活を進めることを重視します。
注意を自分の感情から外す
べき思考にとらわれていると、それが強迫的に意識に浮かぶことがあります。しかし、森田療法ではその思考に執着せず、自分の内面に注意を向けすぎないようにします。注意を外向きの行動に向けることで、感情や思考に振り回されることを防ぎます。
リスク管理
森田療法におけるリスク管理は、基本的に症状の悪化や感情の過度なコントロールを避けるために行動面での調整が必要です。特に、べき思考が過度に強くなると、精神的な負担が増大し、症状が悪化する可能性があるため、以下の方法がリスク管理として有効です。
無理なく日常を送る
森田療法では「無理に治そうとしない」「焦らない」「今できることをする」という考え方を大切にします。べき思考にとらわれて自己批判が強まると、ストレスが増す可能性があります。そのため、自分のペースで少しずつ日常生活を進めることがリスク管理につながります。
身体的な健康管理
精神的な負担が大きくなると、身体的な不調にもつながりやすくなります。十分な休息、適度な運動、バランスの取れた食事など、身体のケアを行うことが心身の健康を保つために重要です。
過度に自己を責めない
「べき思考」によって自分を厳しく評価し、過度に自己批判をすることは精神的なストレスを引き起こす可能性があります。森田療法では「自己批判をしない」ことを推奨しており、感情を否定することなく、ただ存在を認めることが、ストレス管理には有効です。
必要に応じたサポート
森田療法では「他者との接触を避けるべきではない」とされています。自分の状態を他者に理解してもらったり、話すことができる場所を持つことは、心の負担を軽減します。カウンセリングやサポートグループへの参加も、リスクを減らす一つの方法です。
森田療法では「べき思考」に対するアプローチは、感情や思考を無理に変えたり排除しようとするのではなく、そのまま受け入れ、行動を続けることに重点を置いています。また、リスク管理は自己批判や過度の期待を避け、無理のない行動と生活習慣を維持することで、精神的な安定を保つことが目指されます。
(この稿エンパワメントに続く)